カエル講話

近所の田んぼ沿いを歩いていると、ときどきポチャンとカエルの飛び込む音がする。
いつも驚かせて申し訳ないなと思っていたら、ある日、道路側に飛び出すカエルに会った。
彼の進行方向はクルマに轢かれる方角である。
そうして実際にクルマがきた。

仕方がないので彼の行き先を手でシャットアウトし、その手で触れた。
彼は私の思惑どおり進路を変え、田んぼへポチャンと帰っていった。
クルマは何事もなく過ぎて行った。
私は正直なところ「いいことをしたから、いいことがあるといいな」と思った。

ただ、彼の身になってみればクルマの脅威など知らず、行動を妨げられただけである。
感謝するどころか、驚かせやがって、というのが実際のところだろう。
つまるところ、全体が見えないと分からないのだ。

今回はぼくがカエルに関係したケースだが、宇宙から見ればぼくは塵のようなものだ。
認識不可能な世界がぼくに関係し、コノヤローと思わされても、実は勘違いかもしれない。
もちろん「勘違いかもしれない」と思い込んだところで「コノヤロー」は変わらない。
しかし、認識できない世界があることをかのカエルに学んだ。

ところで彼が全体のことを不思議と把握していて、田んぼで「ありがとう」なんて言ってくれるなら、そりゃあ嬉しい。